金魚を飼育している人なら、ほとんどの人がお世話になる塩浴
本当は塩浴などが必要になるような事態にならなければ(しなければ)良いのですが、魚の具合が悪くなれば、必要になる塩浴
というか、金魚の体調不良にはほとんど塩浴ぐらいしか治療法がないのが現実です。
金魚飼育にとって、知っておかなければならない塩浴の方法、食塩で良いのか、続ける期間や水替えは、餌はやっても良いのかなどについて解説します。
なぜ金魚の病気治療に塩浴が効くのか
浸透圧が均衡して余分な体力を使わなくなる
そもそも、なぜ、金魚の体調不良や病気に塩浴が効果があるのでしょう。
そのメカニズムを簡単に説明すると、普段、金魚の体内の塩分濃度は0.5~0.6%に保たれています。
通常、金魚を飼育している水の塩分濃度はほぼ0%ですから、浸透圧の関係から身体を覆っている粘膜を通して、常時体内に水分が入ってきています。
このため、体内の水分が多くなりすぎないように、金魚は常時、余分な水分を尿として排出しています。
ところが、金魚の周りにある水の塩分濃度が0.5%に近くすれば、それだけ排出する尿の量が減少し、余分な体力を使う必要が無くなり、その分、体力が回復することになります。
あるいは水分の排出機能が低下している場合は、体内の水分が増加してむくれたり、体内の塩分濃度が低下している可能性もあります。
殺菌
塩にはもともと殺菌効果があります。真水の中で生きている菌は、塩分濃度が濃くなれば、浸透圧の関係で体内の水分が、細胞の外に流れ出して、生きていくことが出来なくなり、病気の原因になっている菌がいれば減少します。
塩浴は薬よりリスクが少ない
塩浴は、塩の量を間違って濃度が極端に高くなるとかしない限り、塩浴自体が金魚にダメージを加えるという事はほとんどありません。
一方、薬の場合は、メリットも有る反面副作用があったり、容量や使い方を間違えると、かえって金魚にダメージを与えてしまう可能性があります。
新しく入手した金魚に塩浴は必要か
新しく我が家にやってきた金魚は、
・新しい環境でストレスを受けている
・移動に伴い体力を消耗している(病気になりやすい状態)
・以前住んでいたところで体内にウイルスを仕込んでいる可能性がある
ということで新しく入手した金魚は半病人、伝染病患者、バイキンマンと考えて、取り敢えず消毒(塩浴)させましょう。
気休め的な部分もありますが、万一の可能性もあります。
あと、注意するのは、高級金魚と呼ばれるような虚弱な種類(らんちゅうや土佐金など)の場合、自分には免疫があるけれども、別の金魚には免疫がないウイルスを体内に保有している場合があるので、塩浴が終わったからといって、以前から飼育中の金魚水槽に、新規に入手した金魚をすぐに入れるのはリスクがあります。
塩浴の方法
金魚を入れる容器はどうする
塩浴をさせる場合は、飼育している水槽などとは別の、綺麗な容器で行います。
飼育中の容器にはウイルスが繁殖している可能性もありますし、他の金魚が元気に泳いでいて、病魚の治療の邪魔になったりする事があります。
あるいは、フィルターなどに付着している濾過菌なども死滅してしまいます。
使用する容器としては、水槽、バケツ、たらいなどを使います。
どのような水を使うか
水は全て新水を使います。
古水はウイルスがいたり、アンモニア濃度が高かったりしますから、金魚に余計な負担がかからないようにします。
それまで入っていた水と浸透圧の異なる新水も金魚にはストレスなのですが、塩分濃度を高くすることで浸透圧のバランスは保たれるので、それほど負担は大きくなりません。
出来ればくみ置きの水がよいですが、体調不良に気が付いて慌てて塩浴という場合も多いでしょうから、水道水をそのまま使う場合はカルキ抜きをして使います。
ただし、水温だけは必ず、飼育水槽と同じようになるようにします。急激な水温変化は、金魚へのダメージになります。
急ぐ場合はお湯を入れたり氷を入れたりして調整して下さい。
塩の量は(塩分濃度)、計算方法、塩水の作り方
塩浴を行う場合は0.3~0.5%程度の塩水で行います。
注:色替わり前の稚魚の場合、高濃度の塩浴に耐えられない場合があるので、0.2~0.3%程度以下で行うようにしましょう。
一般的には0.5%とと言われていますが、金魚へのショックと負担が大きいことも考慮して、金魚がかなり弱っている、あるいは逆に症状がそれほど重くない場合には0.3%程度で行う場合もあります。
計算方法としては
0.3%なら、水10Lに対して30g
0.5%なら、水10Lに対して50g
計算方法としては、水1L=1000gですから
水量(L)×1000×0.005(0.5%)
となります。
30Lの0.5%の塩水を作るなら
30×1000×0.005=150gとなります。
結構な量で初めて塩水を作る際には驚かれるかもしれませんが、問題ありません。
塩の重さの量り方については、毎回測定しても良いですが、便利なのは塩浴の塩専用の「小さめのカップ」を用意しておき、そのカップに入る塩の量(重さ)を測定しておくと、次回からは目分量で、いちいち重さを量らなくても、コップ何杯のような感じで塩の量を測定することが出来ます。
(塩の量はそんなに厳密に計る必要はありません)
金魚の入れ方(塩の入れ方)
金魚の入れ方(塩の入れ方)としては、塩水用の容器に真水を入れ、金魚を入れます。
その後で規定の量の1/3あるいは1/2の塩をそのままドバッと入れます。
かき混ぜなくてもOK
塩が自然に溶けるのを待ち、急激な水質変化を避けるためです。
時間が経っても塩が溶けていないようであれば軽くかき混ぜます。
1時間程度間隔を置き3分の1づつあるいは1/2の塩を追加していきます。
(水質の急激な変化を避けます)
時間間隔や、塩を入れるタイミングは金魚の様子を見ながら適宜、早めたり遅めたりしてもOK
塩浴を始めた後、水質が悪くなって塩水を交換する場合は、あらかじめ規定の塩分濃度の塩水を作ってから交換するようにします。
(金魚は既に塩分濃度の高い水に慣れています)
塩の種類は
塩は一般的な食塩でOKです。
へたに、特殊な塩を入れてしまって、余計な成分が入っていたらやぶ蛇ですし、治療目的であれば塩分濃度が上がれば目的は達成できます。
味塩はNG、やめて下さい(添加物や化学調味料など余計なものが入っています)
薬などを一緒に入れるのはNG
(浸透圧が変化したり、薬と塩の成分が混ざって有毒物質が出来たり、効果が強すぎたりする可能性がある)
使う塩は普通の食塩が無難です。
へたに銘柄品などを使うと、余分な成分などが添加されていて金魚に悪影響がある可能性が出てきます。
金魚飼育をしていると塩はよく使いますから(^^;)安い塩の方が良いと思います(高価なものを購入する必要はありません)
効果に違いはありません(多分(^_^)v)
塩浴中はエサをやらない
大人の金魚の場合は1ヶ月程度エサをやらなくても餓死することはありません
塩浴中に餌をやってしまうと、身体に入った食べ物を消化するために体力を消耗してしまって、塩浴している意味がなくなります。
あるいは餌を食べたことで、体調が悪化することもあります。
金魚は体力温存のために、体調不良になると餌を食べなくなりますが、それでも餌が目の前にあれば食べてしまうことがあります。
その他にも餌をやってしまうと糞をして、水質が悪化してしまうことになり、水質の悪化でかえって体調を崩すことになります。
特に塩浴中はフィルターは使えないか、使っても濾過菌が働かないので水質の悪化が早いです。
かといって、頻繁な水替えは、金魚の身体にストレスを与える為、これまた病気の回復に悪影響を与えます。
2cm程度以下の小さな稚魚の場合、数日程度以上の断食は餓死する可能性があるので、稚魚の大きさ次第によっては2~3日くらいの塩浴で、えさやり再開ということになります。
そもそも稚魚の場合は長期間の治療には耐えられないと思います。
塩浴を続ける時間(日数)は
塩浴を続ける時間(日数)は、基本的に元気を回復して、体調不良が治るまでという事になります。
ちょっとした体調不良なら1日くらいの塩浴で回復しますし、少し重症でも1週間くらいで回復することが多いです。
体調が回復すれば、元気に泳ぎ出すので分かると思います。
1週間経っても回復しない場合は、ちょっと回復は厳しいかもしれません。
1、2週間経っても状況が変わらない場合、まだ回復の可能性があるような場合で、知識のある人なら、薬による方法も考えられますが、水底に沈んだままというような状況なら、無理な治療を続けるより、そのままの状態をキープしてあげた方が良いかもしれません。
快復後はどうする
原因が寄生虫関連でない場合は、充分回復したと思えば、元の水槽などに戻して良いでしょう。
ただし、急な環境変化は病気をぶり返すことにもなりますから、元の環境に戻す前には徐々に普通の真水を加えていって、塩分濃度を減らし、真水に近い状態になったところで、元の水槽の水替えなどに合わせて戻すと良いと思います。
エアレーション
塩浴をする場合は比較的小さな容器で行うと思います。水質の悪化をわずかでも遅らせるためにも、エアレーションはしておいたほうがよいでしょう。
特に夏場などであれば酸欠になる可能性がありますし、残存酸素量が少なくなることでも体力を消耗します。
ただし、水流が強くなると、体力を消耗してしまうのでごく弱くかけておくだけにしましょう。
塩浴をしても効果がない場合は
詳しい知識を持っている人なら塩浴でダメなら薬でという場合もありますが、金魚の場合、ほとんどの場合塩浴で回復しない場合は、特殊な病気以外、回復は難しいと思います。
通常の塩浴では無理な場合
金魚が病気になったらまず塩浴みたいなところがありますが、通常の塩浴では効果が期待出来ない場合があります。
イカリムシ
イカリムシは一種の寄生虫のようなもので、頭の部分が金魚の肉の中にくい込んで、胴体の部分がひものように金魚のからだから垂れ下がっているので、水槽飼育などの場合、注意深く観察すればすぐに気が付きます。
「リフィッシュ」という薬剤でイカリムシの幼生は駆除できますが、金魚に寄生したイカリムシはピンセットなどで直接除去する必要があり、また、卵も生き残っているので、薬を数回、間隔を開けて使用する必要があります。
高濃度の塩水浴をする事もありますが、慣れていないと金魚を危険にさらします。
ウオジラミ(チョウ)
シラミのような形のウオジラミが金魚の体表に寄生します。金魚の血液を吸い、多数のウオジラミが寄生した場合は、ストレスで死んでしまうこともあります。
寄生された金魚は水槽の壁などに身体をこすりつけてウオジラミを落とそうとするので寄生に気が付くこともあります。
薬剤のリフィッシュを使う事で、成虫、幼生を駆除することが出来ますが、卵は残るので、イカリムシの時と同じように間隔を開けて数回使用する必要があります。
高濃度の塩水浴をする事もありますが、慣れていないと金魚を危険にさらします。
ギロダクチルス病
この病気は、扁形動物の吸虫ギロダクチルスとダクチロギロスの寄生によって起こる病気で、吸虫病とも呼ばれています
体長が0.5~0.8mmでギロダクチルスは皮膚、ヒレなど至る所に寄生、ダクチロギルスはエラに寄生します。
この寄生虫にかかると金魚は狂ったように反転しながら苦しそうに泳ぎ回ります。
悪化するとエラ、ヒレ、体表面に大きめの白い斑点が現れ、表皮細胞が破壊され、色つやが失われ、粘膜で覆われ、ヒレがささくれ立ってきます。
末期には呼吸困難になり、全身至る所がただれて、びらん状になってきます。
治療薬としてはリフィッシュの他ホルマリンやトロピカルなどがあります。
高濃度の塩水浴をする事もありますが、慣れていないと金魚を危険にさらします。
塩浴の疑問あれこれ
塩浴の時間は、どのくらい続ければ良いのでしょうか
基本的に金魚が元気に泳ぎ回るまでです。
1日で回復することもあれば、重症であれば1、2週間かかる事もあります。
それ以上経っても回復の兆しが見られない場合は、回復自体が厳しいかもしれません
塩浴が何日も続く場合に水替えは必要なのでしょう
水替えは必要です。
特に初日の場合は糞をして水が白濁することもありますので、水質が悪くなるようであれば、早めに水替えを行います。
フィルターが使えないのでエサをやらなくてもそれなりに水質の悪化はします。
また、水替えの際金魚への刺激、ダメージを減らすために、塩水はあらかじめ同じ濃度のものを作って、温度合わせも兼ねて金魚を塩水させている容器の近くにおいておきます。
塩浴の最中に金魚が暴れたらどうする
塩水の中に入れたときに金魚が暴れる場合考えられる原因としては
・塩水濃度が濃すぎる
・かかっている病気によっては塩水が合わない
・地域の水質によって塩水に何らかの影響がある
などが考えられます。
塩の量を間違って塩分濃度が濃すぎる場合、金魚が苦しくて暴れる場合があります。
「かかっている病気によっては塩水が合わない」と「地域の水質によって塩水に何らかの影響がある」については何とも言えないのですが、私の場合、かって転勤族だったため、ある地域(マンション)では新水自体が金魚に合わないために、新水に金魚を入れると体調不良になる。別の地域(マンション)では塩水(0.5%)に入れると苦しがるので30分程度で塩浴を中止したこともあります。
引っ越しに伴い、一緒につれていった金魚たちなので体質が塩浴にあわないと言うことはなかったと思います。
あるいは塩分が身にしみるような病気だったのかもしれません(>_<)
金魚が暴れるようであれば、取り敢えず塩浴は中止し、塩分濃度を0.2~0.3%程度にして再挑戦してみて下さい。
飼育水槽でそのまま塩浴しても良いか
飼育水槽で塩浴してしまうと、濾過装置の濾過菌が死滅するか減少してしまいます。
飼っている金魚全体を塩浴したい、あるいは多数の金魚をまとめて塩浴したいのならある程度やむを得ない場合もありますが、可能であれば、綺麗な別の容器で行った方が良いでしょう
塩水浴が効かないときは薬を使った方が良いのか
大概は塩浴で金魚の病気は治りますし、塩浴でダメなのに薬なら治るという可能性は少ないと思います。
ただし、病気によっては、塩浴では効果のないものもありますし、その病気に特に効果があるという薬もありますので一概には言えません。
ある程度病気が特定できて、その薬が有効であるという場合で、塩浴では改善しないという場合には薬を使った方が良いでしょう。
注意するのは、塩浴をしている場合は、一旦真水に戻した上で、所定の用量を守って薬を使うようにしましょう。
塩水浴の塩水が白濁する理由と対処方法
塩水浴の塩水が白濁する原因は塩浴する前に食べたエサが消化されて糞として出てきた場合が考えられます。
塩浴では濾過能力はありませんので、糞が出ればそのまま白濁します。
餌などをやっていれば当然、水は白濁します。
その他考えられるのは体調不良になった金魚の粘膜が剥がれたり体液が流れ出して、水が腐ってくる場合があります。
いずれにしろ白濁した状態では金魚の身体に良くありませんから、軽い白濁でしたら半量程度、かなり水質が悪化していると思われる場合は、新規の塩水に入れた方が良いでしょう。
塩浴の時にヒーターは必要か
ヒーターは病気の金魚に必ずしも良い影響を与えるとは限りません。
水温が上がれば環境が変化し弱った金魚にはダメージになることがありますし、ウイルスによっては増殖が早くなったり、金魚の代謝が活発になって水質の悪化が早まる、水替えが面倒になる(水温合わせ)等のデメリットがあります。
ただし、水温を上げることで明らかに効果があると考えられる病気などの場合はヒーターを使う事もあるかと思います。
・冬場で水温が下がりすぎる場合や、昼夜で水温の変化が大きい場合
・転覆病(私個人的にはあまり効果はないと思いますが25~28℃程度に水温を上げると効果があるという人もいます)
・白点病
(よほど慎重に温度を上げていかないと温度変化が逆効果になることがあります)
塩浴の時にフィルターは必要か
これまでも述べてきたとおり、塩浴で濾過菌は死滅しますし、エサもやりませんからフィルターは不要です。
ただし、塩浴の初期に糞が出てくる場合やゴミ取り程度に物理濾過を期待して簡単なフィルターを設置しても良いでしょう
塩浴の時の金魚の糞はどうする
塩浴を始めた当初は糞をするかもしれません、その場合は金魚用の網などですくって掃除します。
濾過されていないので、水質が悪化しないように早めに掃除した方が良いでしょう。
水替えで対処する方法もあります。
当然塩浴中は餌はやらないようにしましょう。
(水槽が汚れるだけでなく、餌の消化のために体力を消耗します)
水草は入れても良いか
塩分濃度の高いところに水草を入れてもすぐに枯れてしまって、水を汚すだけです。
あるいは金魚が食べてしまうと糞となって出てきて、水質悪化の原因になります。
また飼育していた水槽でそのまま塩浴する場合で、水草を入れている場合は枯れますから、塩浴の最中は待避させておく必要があります。
まとめ
塩浴は金魚の病気治療の基本中の基本
よほどややこしい病気にならない限り、大概の病気や体調不良は塩浴で治すことが出来ます。
逆に言えば塩浴で治らないようなら、かなり回復は厳しいです。
もっとも、金魚を体調不良や病気にしないためには、日頃の世話が大切で、病気にしないように健康に育てたいものです。
とは言え、金魚の調子が悪くなったら早めに、気軽に塩浴で元気な身体に戻して上げましょう。