金魚の繁殖を行いたい人は多いでしょう。しかし、金魚の繁殖にはちょっとしたこつやノウハウが必要で、金魚を繁殖させて経験がある人は少ないと思います。
しかし、親魚を準備して、環境さえ整えれば、産卵ふ化までは比較的に誰でも行う事が出来ます。
所が、生まれてきた金魚の稚魚は驚くほど小さく、毛仔、針仔などと呼ばれるほどで、ふ化直後は5~6mmの髪の毛先ほどの大きさしかありません。
この小さな子供達を可愛い大人の金魚まで育てるには、小さな稚魚の時のエサをどうやって確保するかというのが、金魚の繁殖を成功させるための重要なポイントになります。
金魚の繁殖においてとても重要なこの稚魚の時のエサをどうするかについて考えてみたいと思います。
稚魚にやるエサの種類
一般的な金魚の稚魚に与えるエサについて解説します。
ブラインシュリンプ
ブラインシュリンプの卵
ブラインシュリンプとは、元々は世界各地の塩水湖に生息する甲殻類(エビ)の一種で、卵の状態で、長期間の乾燥に耐えることから、熱帯魚や金魚の稚魚のエサとしてよく使われています。
通常は、ブラインシュリンプの卵を3%程度の塩水に入れ24~28°程度に保温し18~24時間(種類によっては30時間ほどかかるものもある)ほど強めのエアレーションをかけることでふ化するので、このふ化したての幼生を、金魚の稚魚にエサとして与えます。
注:孵化のさせ方の細部についてはそれぞれの卵に付いている説明書を参照してください。
ブラインシュリンプの孵化器
ブラインシュリンプは植物プランクトンやパン酵母などを使って育てれば1cm程度に成長します。
これらの大きくなったブラインシュリンプを冷凍して、熱帯魚などのエサとして販売されている事もありますが、金魚の稚魚のエサとしては、通常は使いません。
ふ化直後のブラインシュリンプは0.4mm程度の大きさで、ふ化したての金魚の稚魚のエサとして最適で、これを稚魚の餌として与えます。
もっとも、ブラインシュリンプは高価なので、生まれたての金魚の稚魚のエサとして使い、稚魚がある程度成長した段階で、別のエサに移行する人も多いです。
ふ化したてのブラインシュリンプ
ミジンコ
金魚の稚魚のエサとして、本来はミジンコが最適です。といっても、デメリットとして
・大人のミジンコは結構大きいこと(1~2mm)
・動きが速く、生まれたばかりの稚魚だと上手く食べられない場合があり、稚魚の成長に差が出やすい
・最近は、ミジンコが湧いている池などが減少し、採集することが難しく、また自然の池などでは病原菌や有害物質などが混入する可能性があること
・自家繁殖可能ですが、安定的に湧かすことが結構難しい
自家繁殖させたミジンコ
逆にメリットとしては
・ミジンコはブラインシュリンプのように真水の中でも死ぬことはなく、稚魚の飼育容器の中でそのまま生きているので、多めに与えても害にはならないこと
・栄養豊富な生き餌という事で、ミジンコが安定的に確保出来る環境にあるのであれば最適な金魚の稚魚のエサと言える。
ミジンコの繁殖方法やミジンコのエサ、管理の方法(金魚の繁殖)
卵の黄身
昔はよく卵の黄身を固ゆでにしたものを布で裏ごしして与えたといいますが、卵の黄身は水に溶けてすぐに腐敗してしまいますから、最近はあまり使うことは無いと思います。
よほどエサの準備が遅れて緊急事態になったときに、つなぎとして少量使う程度になります。
稚魚用の人口エサ
ある程度の大きさになったら、人口エサでも充分金魚の稚魚を飼育することが可能です。
人によっては、ふ化直後から人口エサを使う人もいるかも知れません。ただし稚魚のうちは動く物でないとなかなか食べようとしませんので、最初は食いつきが悪いと思います。
やり過ぎると水質の悪化に繋がりますから注意しましょう。
稚魚用のエサには、ふ化直後から使えるように、細かい粒子にしているものから、成長段階に合わせて粒子の大きさを変えているものなどがあります。
栄養もあり安定的に入手可能ですので、稚魚飼育の主力になると思います。
金魚の稚魚のエサはいつから与えるか
金魚の卵は産卵後4~7日くらいでふ化します(水温により、水温が高いほど早くふ化する)
ふ化し立ての稚魚は水槽や池の壁、あるいは産卵巣にしがみついてじっとしています。
ふ化したばかりの稚魚
この段階では、稚魚はお腹に栄養分がたまった「さいのう」(ヨーサック)を抱えて生まれてきていますから、エサをやる必要はありません。
この期間は、色々他のサイトを見ていると3日程度としているところがほとんどなのですが、うちの金魚たちはふ化した翌日の午後くらいには元気に泳ぎ回るので私的には1~2日程度と考えています。
水温によっても変化するという人もいます。
結局、さいのうの栄養分がなくなれば、稚魚たちはエサを探して泳ぎ回るようになりますから、稚魚たちの様子を見ながら、飼育水槽などの壁面や、産卵巣などから離れて泳ぎ回るようになれば、そろそろエサを与える時期と言えます。
ふ化したばかりの稚魚
金魚の稚魚のエサの与え方
生まれたばかりの時には動いている物をよく食べる
生まれたばかりの金魚の稚魚は、本能的に動いている物をエサと認識します。
ですからふ化し立ての稚魚にはブラインシュリンプやミジンコの小さな子供が良いのですが、入手が困難な場合は、稚魚用のエサか、なければ普通の金魚のエサを細かく砕いて与えるという方法もあります。
とにかく生まれたばかりの金魚の稚魚は5、6mmくらいしかなく、髪の毛ぐらいの太さですから、口の大きさも小さいです。
エサは小さくしないと口に入りませんので、その辺りは充分気を付けましょう。へたをすると、水が腐るほどエサを与えているのに稚魚たちが餓死するなんて可能性もあります(T_T)
人口エサは最初はなかなか食べないかもしれませんが、お腹が減ってくれば、水面にあるエサが風で動いたり、水中に落ちてくるエサを動いていると勘違いしたりして、間違って食べてくれるかもしれません
そしてその内に稚魚たちも「あ、これ(人口エサ)食べられるのね」と認識して次第に自然に食べてくれるようになります。
因みに人口エサになれて、体長も15mmくらいになれば、与えたエサが水面に漂っているうちに群がるようにバクバク食べるようになります。
人工餌に群がるらんちゅうの稚魚
成長に合わせて、エサを変える
ふ化し立ての稚魚にはなるべく生きたエサを与えるようにし、やむを得ない場合は、稚魚の口に入るように小さく砕いたエサを与えるようにします。
また、ふ化し立ての時には身体も小さく食べる量も少ないので、エサのやり過ぎに注意します。
毎年、金魚の繁殖を行っていますが、ふ化し立ての稚魚用の細かく砕いてある初期用のエサは全然減らないですけどある程度成長した稚魚に与えるエサはずいぶん速く無くなります。
ふ化後1週間
なるべく全体的に広くばらまく
親魚の場合はエサをやるとばっと集まってきますけど、稚魚の場合は、行動範囲が狭いし、餌をやったからといって、動き回ることも少ないです。
ですから、エサをやるときはなるべく全体に広くばらまくように与えます。
エサくれ~
金魚の稚魚のエサの回数、頻度は
生まれたばかりの稚魚は、身体が小さいため、一度にたくさんの餌を食べる事が出来ません
でも、身体はどんどん成長していますから、栄養はたっぷり摂らないと行けないという事で、人間の赤ちゃんと一緒で、回数を増やしてエサをやる必要があります。
また、金魚は、成長した親の場合、1ヶ月くらいエサをやらなくても餓死することはありませんが、生まれたばかりの稚魚だと2、3日エサをやらなければ餓死してしまいます。
えさやりの回数としては、最低1日2回、出来れば4~5回くらいは与えた方が良いです。
といっても、エサのやり過ぎは水質の悪化を招きかえって悪影響がありますから、広く全体に行き渡るようにしながら、かつ1回あたりは出来るだけ少なめに回数を増やして与えるようにします。
エサをやり過ぎれば、水質が悪化し、だからといって、頻繁な水替えも稚魚にストレスを与えたり、病気にしたりしますからこのあたりのバランスを取ってほどほどにということになります。
慣れないうちはエサは与えすぎることが多いので、自分としてはちょっと少ないかなと思う量を3~4回程度与えるようにすれば良いと思います。
ふ化後1ヶ月
まとめ
金魚の繁殖、せっかく卵を産んだのなら、生まれてきた稚魚たちを大切に育てたいものです。
金魚の繁殖は、まともな金魚の形になってくる最初の1ヶ月が大変です。毎日切らさぬように、何回もエサをやり、水質も悪化しないように気を使う必要があります。
でもこの1ヶ月を過ぎると、稚魚たちも見違えるように金魚らしい形になってきます。
大きく育った(まだまだとってもちび助ですが)稚魚たちを見ると、苦労もすっかり報われる気がします。